2019年02月23日 Sat

デザインの系譜

ある建設会社のサイトで折り紙状の階段を見た。
私が「黒部の住宅」(2013)で設計した階段と殆ど同じに見えた。

これまでにこういうことはよくあった。たまたま偶然なのかそうでないのかはわからない。ある物をデザインするとき「ぽっ」と斬新なそれまでにない形がひらめくことは確かにある。それまで頭の中で形にはなっていないが無意識に練っていた物が何かをきっかけにして顕在化するのだと思う。


谷口建設社屋」(1997)の階段は斜めのささら桁を無くしたいという気持ちからデザインした。段板(スチールプレート)を溶接して斜めに流したフラットバーをコンクリートの中に打ち込んでコンクリートから段板のみが飛び出していてその段板に集成材を留めて仕上げとしている。残念ながらささら桁を無くしたわけではなくてコンクリートの中に打ち込まれているから見えないだけなのだが・・・。「広島の住宅」と「珠洲の住宅」ではささら桁を打ち込まずにコンクリートにボルト留めしてその上に石膏ボードを張ることで谷口建設と同じ様に見える階段としている(こちらの方が施工が楽で比較的安価)。「西金沢新町の住宅」と「金沢市内の住宅」・「黒部の医院」は谷口建設と同じやり方だった。

しかし結局のところ「ささら桁」は隠すことはできても無くすることはできなかった。その上この階段は段板が片持ちのなので撓みを押さえるためにスチールプレートの厚さが22mmと厚い。その重い階段を留める相手は鉄筋コンクリート造か鉄骨造じゃないと耐えられなかった。木造ではできないデザインというのが残念だった。

画塾」(2005)でようやくささら桁を無くすることに成功した。階段一段に一本ずつ細い鉄骨の柱を用意しその柱に蹴上げ板をボルト留めすることで桁の存在を無くした。ついでにぺらぺらの段板で階段の存在自体を希薄にした。折り紙の様な階段を細い柱にボルト留めすることで自立させることは鉄骨だけではなく木造でもできそうだということで「黒部の住宅」の階段があり、画塾の鉄骨階段と同じ様に間柱に蹴上げ板を留めている。

たかが階段だけどそこにはいろいろ試行錯誤があって模索しているのだがやりたい方向は一つ「ささら桁を無くす」・・・につきる。

屋根の設計についても同じ様に「屋根の勾配を無くしたい」を試行錯誤している。「谷口建設社屋」や「広島の住宅」(1997)では真っ平らな屋根は怖かった。それでR状の屋根を作って水の溜まる部分は最下点の線状の部分だけにしている。やって見たら問題は無さそうなので「珠洲の住宅」(1999)から真っ平らにした。それだと端部から雨水がだらだら垂れるので端部に塩ビ製のアングルを溶着した。塩ビ鋼板に塩ビのアングルを溶着するのだから問題ないと思っていたのだが厚さが違うと線膨張係数が違う様で溶着部分に不具合が出て改修で痛い目にあってしまった。それで「押水の住宅」からは端部の塩ビ鋼板で45°立ち上がりを付けることにしている。「羽咋のオフィスビル」の本体はこの真っ平らの屋根だが屋外階段の屋根は大きな鉄板の一枚板の屋根で防水の必要も無い(溶融亜鉛メッキ)ので設計者にとっては安心できる屋根となった。その屋根だって「黒部の医院」の玄関庇の発展系だし・・・。

押水の住宅」(2003)では外壁の木の劣化を避けるためにガラスで覆った。建物をガラスで覆うのは良いんだけどイニシャルコストが大変で発展させることができなかった。でも浴室をガラス張りにして・・・そのガラスの向こうがコンクリート打ち放し(西金沢新町の住宅)・磨りガラス(O邸改修工事金沢市内の住宅)、障子や左官(羽咋の住宅改修)、板張り(黒部の住宅)・・・とバリエーションを持って発展させることができた。

また、「押水の住宅」の外部を覆っているサッシュを防火仕様にしていけばあの外観のビルができるのではと・・・実際には無理だったのだが別方向に考えて木を耐火材料にしたら・・・を実現したのが「画塾」(2005)。

残念ながら仕事の数が少ないとか発展させるには実験などの費用が掛かりすぎるというのもあって一度だけのデザイン要素もいっぱいある。螢屋の男子トイレの小便器や女子トイレの雨水を流すガラス屋根竪樋を兼ねた耐震要素とか、小便器床のガラスとか、木の耐火被覆とか・・・。このように発展できなかったデザイン要素もあるが、垂木などの補助部材を減らして殆どを構造部材で構成する・・・という目的は「谷口建設」社屋以来殆どの建物で実現しているので「表面のデザイン」ではなく「構造のデザイン」という意味ではやることはやってきたと満足してる。

何れも最初のデザインから目的が決まっていてその目的を実現するための試行錯誤があって発展している(泥沼に嵌まっていっているに近いのだが)。デザインというのはその系譜を見ればオリジナルなのかがわかる。