1999年06月04日 Fri

山形の建築

新潟市民芸術文化会館→道の駅「あつみ」→土門拳記念館→酒田市国体記念体育館→酒田市美術館→庄内米歴史資料館


道の駅「あつみ」
山形県鶴岡市早田字戸ノ浦606山田・谷津研究室+地域空間研究所

道の駅「あつみ」は、国道7号線を北上して山形県に入ってしばらくの所にある。 今回は、高速道路が無いために一般道を走ったので、幾つかの道の駅で休憩した。その中では唯一ここが建築的に良かった。東北工業大学の山田・谷津研究室+地域空間研究所の設計の木造建築です。竣工してからかなり経っているのですが、みすぼらしくなることもなく、しっかりしていました。海にも降りていけるので、どうせ休憩するならここがいいのでは。 海沿いの道路を走っていて、「おぉっ、あれは、なんなんだ ?」とちょっとわくわくしてしまう感じで、思わず車を停めた。誰が設計したのかを、事務室で聞いて教えてもらった。谷津氏は建築学会北陸支部の表彰式で「珠洲の斎場」が賞を貰ったときに一緒になったことがある。こんな処で名前を聞こうとは・・・


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正面から


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左側が食堂・右側が売店。ナイジェル・コーツのノア
の箱船ってこういう感じだっけ? 忘れちゃったなぁ。


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海側から。このとき土砂降りで写真を撮ろうとして全身ぐっしょり濡れてしまった。


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海側から。雨が晴れて建物が綺麗に見える。


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売店棟の内部


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こっちは休憩所


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梁伏せ。これって建方大変だよね。ワンスパンを地組みして揚げるのかな。



土門拳記念館
山形県酒田市飯森山2-13
谷口建築設計研究所
間・平尾工務店JV
1983.07竣工
SK1983/12/P145・NA1991/0930/P256・NA1983/1121・NA1995/0918/P61・DT120/P107

土門拳記念館と酒田市国体記念体育館は、飯森山公園の中にある。 池の畔に建っていて、見学をした後、階段を上がってブリッジ ?を渡ると建物の裏へ出る。池をぐるっと回って向こう岸から建物を観てね ! ってことだろう。

記念館の池に面した休憩室外のテラス部分に出るサッシュのドアに「外に出ないでください」の表示がある。どこの美術館でも、中庭やテラスへのドアは使用禁止になっていることが多いが、何故? せっかく気持ちよさそうなところを建築家が用意してくれているのに・・・。多分、利用者のマナーが良くなくて、そういう貼り紙がされるようになってしまうんだろう。谷口氏の美術館は、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館や豊田市美術館などの新しいものを観ているので、進化の度合いがすごいなという印象です。当然、この建築も良いけど、一作一作新しい物ほど良くなってきているのが実感できる。順番に古い方から観ていけばとちょっと後悔してしまった。でも、豊田の美術館で使っている竪しげの手摺子なんかの原点を見られて「なるほど」と感じ入った。

建築物とは関係がないけれど、すごく丁寧に掃除されているのを観て感動した。おばさんが、床の一つ一つの汚れを見つけては、ごしごしとふき取っていた。職員の方と話をしていても、建物の維持に気を使ってる様子を感じることができた。1983年竣工だけど、メンテナンスがいいせいもあって、そんなに汚くはなっていません。 展示物を撮さないという条件で建築の撮影はOKだった。

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サイン


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アプローチ側全景。外壁はシェニートモンチークのバーナー仕上。


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ここがアプローチ


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右側がエントランス。左側の階段を上がってまっすぐ行くと、水の流れる中庭の上
をまたいで建物の向こう側に出る。池を一周して帰って下さいという意味でしょう。


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エントランス。ドアはブロンズ硫化いぶし・・・だと思う。


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エントランスホール


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亀倉雄策の銘板(ブロンズ硫化いぶし)


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展示室側からエントランス方向をみる


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手摺と手摺子の詳細


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展示室内部 壁はコンクリート小叩き仕上。コンクリート面には誘発目地が
入っているが、予定通りその部分にクラックが入っていた。見事に計算通り。


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こういう部分の目地には悩むね。蹴上は目地無し・側面は目透しで巾木と壁を分ける。


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スロープ側の目地取り合い


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展示室から池方向への廊下。中庭側(写真左手)の嵌
殺しの窓は手前より奥が級数的に幅広くなっていく。


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廊下見返り


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廊下から中庭を臨む


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サッシュ下部の結露受け


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視聴覚室。勅使河原宏氏デザインの庭で「流れ」。最上川産の黒玉石と笹。


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庭だけの写真


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休憩室から外のテラスには「出ないで下さい」と注意書きが・・・。気持ちよさそうなのに。


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中庭。イサム・ノグチ氏の「土門さん」という玄武岩の彫刻。階
段の手すりはFBでちょっと太く見えますが、このデザインの
流れはより軽快になって豊田市美術館に受け継がれています。


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中庭


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ブリッジを渡って建物の向こうへ


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記念館の裏側。ブリッジを渡った後の階段の処理には、いい解答が出ていなかっ
たのだろう。豊田市美術館ではもっとうまく処理されているように思えた。


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池越しに記念館を臨む


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仰せの通り池をぐるっと回る。池の対岸から正面を。


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ぐるっと


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一周してきた



酒田市国体記念体育館
谷口建築設計研究所 東急・加賀田・大井JV
山形県酒田市飯森山2-296-1
1991.06竣工
SK1991/11/P229・NA1991/0304/P108・NA1992/0224/P133・NA1991/1111/P290・DT111/P40

体育館は、シルバーの外壁が腐食してきていて、残念でした。 美術館より新しいのですが、手入れの仕方のせいかちょっと古びて見えました。 内部は、体育館らしい臭いがした。換気、悪い ?


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右側にグラウンドを挟んで土門拳記念館がある。記念館から観るとすっごくカッコよく見えた。槙氏の秋葉台の体育館を観てから、ちょっとやそっとの体育館では驚かなくなってしまった。あれって衝撃的だったよね。あれ以降みんなあのパクリだもん。


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夜は庇部分が光って綺麗なんだろうね。きっと


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アプローチ


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脚部詳細。舗装は浸透性のやつ。


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地窓部分詳細。外壁がかなり腐食しているのは写真では分からないか。


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なんか照明器具がやたら眼に付いたけど、こんなもんだっけ?


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大きい庇として飛び出ている部分は、僕たちが画を描くと「こんなこと
したら高くつくじゃないか」って役所の担当者に叱られるんだろうね。


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体育館外部の中庭 ? っていうのかな? ここ。この庭の手入れはあまり綺麗ではなか
った。でも、酒田市美術館の芝刈りをしていたから、次にここを刈るのかも知れない。




酒田市美術館
山形県酒田市飯森山3丁目17-95
池原義郎・建築設計事務所

酒田市美術館は浅蔵五十吉美術館と兄弟のような関係にあると感じた。浅蔵の方は敷地に制約があったので水盤を設けて庭を建築に取り込んだような設計になっているけど、酒田の場合は、広い芝生の庭に開いた感じ。浅蔵の場合は単体の建築としてまとまっていて、酒田は、デンマークのルイジアナ美術館のように自然に埋もれているように広がり全体像は把握できないような感じ。浅蔵は建築費があまりなかったのだろうけど、壁仕上げがクロス貼りです。池原氏の細かいディテールに接着剤がついていけず、クロスがはねてしまっている部分が眼についた。酒田は石・コンクリートなど素材で壁を造っているのでディテールまで美しく仕上がっている。一番奥の常設展示だけはクロスだったけど・・・。

酒田では、彫刻の展示方法に感心した。出目地のコンクリート壁に開いた開口から外部にガラスのDTP工法でちょっと振った箱をつくり、彫刻を展示している。そのガラスの外には(人工的な自然には見えないような)自然が広がっています。ガラスの屋根に溜まった雨を通して入る光も面白かった。(も少し水勾配が必要では、とも思うが)入り口やホールで見せた芝生広場という「自然」と、展示と展示の間にある休憩室や彫刻のバックで見せる「自然」を区分けしている。漫然と建物周囲の自然を見せるのではなく、どこで何を見せるかを計算していると言うこと。また、屋外の芝生面や植栽を10人程で丁寧に管理されていたのが印象に残っている。
床の石もかちっとした磨いたものではなく、珍しくざらっとして今回のはいいなと思った。いつもどおり、ディテールは、やりすぎるほどで、写真を撮るのも疲れてしまい、そこまでやるかと思ってしまった。入り口付近にある公衆便所も「ここまでやるか」って感じ。 ホント日本のスカルパだよ。

浅蔵の方の突き当たりにある大きな両開き戸のフランス落しは気に入っていた。今回は、デザインの同じ扉はあったけど、そのフランス落しは使ってなかったなぁ。

この美術館は、ガラス面から見える景色がポイントの一つになっていると思う。シングルガラスで東北の気候では、冬季間ずっと結露で曇ったまま。そういうのはいまいちではないのかと思ったけど、どうでしょうか。建築家の作品では、冬季間のことを考えてあるものは少ない。リチャードマイヤーのフランクフルト工芸美術館では、ガラス面に熱線入りのものが、使用されていた。磯崎氏の中谷宇吉郎・雪の科学館のトップライトは、ペアガラス+合わせがラスになっていて「やるな!」と感心した。そういう建築に逢うことは稀なんだけど、勉強不足ですか ? 他にもっとありますか ?

常設展示室2へ入る手前の打放しの壁にクラックが入り、白華が流れていた。 打放しの壁では避けられないことではあるけど、現在美しい美術館が今後どうなっていくかを暗示しているようです。漏れを止めるためには、外壁側からのエポキシの注入しかないだろう。こういうことを考えて前川氏は打放しからタイル打込みにやり方を変えた。また打放しの建築が増えた近年の建築での改修はどうやっていくのだろうか?この辺りの問題についての解答はまだ出ていない。何十年か後に分かるのを待つしかないのか・・・。建築を学ぶ学生や我々のように設計を職業とするものが、建築を観に行ってファッションだけを学ぶのではなく、性能面においても建築を深く学ぶ必要があるように思える。

ここの喫茶室は、芝生の中に飛び出ている。ちょっとお茶を・・・という時にこういう所で、ってのもいいね。下手な喫茶店に行くよりずっと気持ちがいいし・・・。 ところで、東北って喫茶店が少ないけど、何か理由があるのかな? 今回、車で走っていてもお茶するところのないのに驚ろいたし困った。東北の人は、堅実な方ばかりで家に帰ってお茶するの?

僕は酒田市美術館と浅蔵五十吉美術館の両方を見学することをお奨めしたい。 ここは住所と名前を書いて事務の許可を貰うと、腕章をかしてもらって美術品以外の撮影がOKだった。ありがとう。

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案内板。左側に美術館、右側に便所、正面方向に土門拳記念館。


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案内板詳細


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アプローチ。壁は出目地。


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壁を挟んで左がアプローチ、右が美術館


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入り口の・・・・これなんて言うの ? これもキャノピーっていうのかなぁ?


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この部分の金属工事代だけでもすごいよね。キャノピー+ドア


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キャノピー詳細。ステンレス加工。


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キャノピーの見上げ


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入り口の壁をくぐってからのアプローチ。
ず〜っと歩いて行って右に折れるとエントランス。


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アプローチの振り返り


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エントランスキャノピー。左に見えるのがショートカット用の入り口。


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キャノピーの柱頭詳細。メカニカルな感じがカッコイイなぁ。


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アプローチが長いのでショートカットするための入り口。柱
にくくりつけられたプラスチックの仮設の館名表示が悲しい。


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エントランスアプローチ側からショートカット入り口庇を見る


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傘立て 。床に水受け用の彫り込みがある。殆どの場合傘立てをデザインしても数が
足りなくなって既製品のが置かれることが多いけど、この美術館は大丈夫でしょうか。


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傘の雨水受け彫り込み詳細


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写真ではよく分からないけど、DTPでつくられたガラス屋根部分
に雨水が溜まってそこに陽の光が当たったところが綺麗でした。
水が溜まることがよくないと言う意見もあるでしょうけれど・・・。


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喫茶入り口


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芝生の広場に飛び出た感じの喫茶室。エントランスホールの正面にある


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喫茶室壁ディテール


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芝生側のカウンター


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「あー、どっこいしょ。いい眺めだよ」と・・・山形弁だからよく分からなか
ったけど、多分そんなようなことをいっていた、二人のお年寄り夫妻。


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喫茶室側から中庭に面した廊下的休憩所を見る


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手摺・・・というかバリアー


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手摺詳細


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エントランスホールから受け付けカウンターを観る


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照明器具


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花のような可憐な印象の照明器具


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照明器具頂部


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受け付けカウンター


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常設展示室2の入り口ドア。スチール+焼き付け塗装。これ幾らだ?
アプローチ部分にあったのは同じデザインのステンレス製だった


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常設展示室2までの渡り廊下見返り


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スチールドアのフランス落しをきちんと降ろさず開閉したのでしょう。天井に傷が・・・


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渡り廊下


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展示室


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展示室天井。浮いたように見えます。斜材間に入ってい
るパンチングメタルは構造的に必要なのでしょうか?
ああ、そういえばパンチングメタルの部分とPLのとある。


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ちょっと角度を変えて


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これはPLのやつ


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常設展示室2までの渡り廊下外部の庭。笹がびっしり植えられています。


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芝生広場から美術館をのぞむ。手前は安田侃氏の「翔生」


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トイレは天井からの間接照明だけ


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展示室間にある休憩室


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休憩室を外部から観たところ


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休憩室


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自然をバックにした彫刻の展示。今回の美術館のテーマの一つだと思う。ガラスの箱を
ちょっと振って躯体から飛び出させたところに彫刻が置かれて一枚の画のようです。


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常設展示室2の手前にある彫刻の展示。左上の躯体から白華が流れている。


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常設展示室4付近の彫刻の展示


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屋内消火栓


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屋外の公衆便所。写っているのは芝生の手入れをしていたおじさん達。


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男子便所。明るいしいい感じ。天井の木を張っているの
は苦労した感じが伝わってきた。奥の方が女子便所。


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男子便所入り口


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コンクリート壁の笠木納まり。オープンなのがいいと思う。