1999年10月22日 Fri

「谷口建設社屋」

建築士会連合会賞表彰式 1999/10/22(金)13:30 -
会場 ビッグハット 長野市大字若里923-1 tel 026-223-2223

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左から順に柳川陽文氏・小林郁雄氏・菊竹清訓氏(士会連合会会長)・宮本忠長氏(長野県建築士会会長)・近藤道男氏・私


募集締め切り 1999/05/31
現地審査連絡 1999/07/01
現地審査 1999/08/02
入賞連絡 1999/09/01
入賞発表 1999/10/01
審査委員長 山下和正 
審査委員   秋元和雄・後藤眞理子・材野博司・佐久間博・佐野幸夫・平倉直子


応募作品56点・表彰式への旅費支給あり・賞金あり(30万円・税引後27万円)・建築主、施工者への記念品(置き時計)あり(後日宅配便にて)
第15回のための募集ポスターを作成中とのことで、階段の写真を使いたいのでポジを送って欲しいという連絡有り 1999/12/15


審査総評

作品賞審査委員長山下和正
第14回日本建築士会連合会賞に対し、16建築士会から56作品の応募があった。従来は30点前後の応募数であったものが、昨年は50作品と一挙に増加したが、今回はさらに増加したことになる。
第一次審査では審査員全員が参加し、資料を熟覧して投票を行い、5及び4票を獲得した全作品7点及び3票を獲得した6作品の中から3点を選び、合計10作品を現地審査の対象とした。
現地審査は7名の審査員が2〜4名に分かれて、7月中旬から8月下旬までの間に行った。現地審査では建物を実見するばかりでなく、設計者や施工者・建て主などから直接さまざまな説明を受けることができ、提出資料だけでは読み取れないさまざまな情報を得ることができた。
最終審査には委員全員が出席し、(1名病欠につき、書面にて審査意見を提出)、まず作品ごとに現地審査を行った報告を行い、質疑応答が繰り返され、全員が意見を述べ合う形でほぼ共通の情報が得られるようにと時間をかけた。その後1作品ずつ入賞の可否について採決を取り、まず4作品がほぼ全員賛成で優秀賞に決定された。次に残った6作品の中から優秀賞を拾うかどうか、また奨励賞を選ぶかどうかが検討され、結果的にこの中から2点の奨励賞が決定された。
優秀賞の「棚倉町立社川小学校」(近藤道男)は設計者の学校建築に対する永年の蓄積を集大成した労作であり、さまざまな要素に対するきめの細かさが評価された。「群馬県立しろがね学園・渡良瀬養護学校しろがね分校」(船越徹)は厚生省と文部省の2省が所管する大規模な福祉と教育の複合施設で、複雑な機能を有する全体をひとつの形に無難にまとめあげている。「谷口建設社屋」(長村寛行)は地方の小建設会社の社屋であるが、木造の良さを生かした新しい感覚の佳作で、作者の創意工夫が随所にみられる。「淡路サービスエリア上り線休憩施設」(柳川陽文)は、高速道路のアイキャッチとしては控えめであるが、明るい室内空間は、採光にさまざまな工夫がなされ、活気があって魅力的な雰囲気をつくり出している。
奨励賞の「平成ドミノ・堺」(横河健)は大胆な住戸配置プランを持つ開放性の高い高層住宅で、その実験性が評価されたが、住戸のプランや住戸から庭園への連続性に多少の問題点が指摘された。「大興蓼科山荘」(北森俊妃護)は森林の景観に素材の上でも形態の上でもマッチした好感の持てるたたずまいを見せているが、外部空間の利用の仕方にもう少し工夫があってもよいのではとの指摘があった。
第一次審査には上記の他「コスモスライフ赤坂ビル」(田中幸男)、「北鎌倉明月院草庵・月笑軒」(山本良介)、「ハービスOSAKA」(苫名正)、「佐川美術館」(内海慎介)などが選ばれ、いずれも力作であったが、惜しくも賞を逸した。
今回の受賞作は、今までで最も激戦であったということもあってか、いずれもレベルが高く優れた仕事であった。立地がすべて地方(非大都市圏)であったという点では珍しい現象であったが、設計者の活動拠点は、金沢の長村氏以外はやはり東京と大阪であった。昨今の現象をよく反映した結果というべきだろうか。地方在住の設計者がもう少し活躍してほしいところである。
最後にこの場を借りて、応募いただいたすべての方々と現地審査にご協力いただいた関係者各位に厚くお礼を申し上げる。


棚倉町立社川小学校 近藤道男 (評/後藤 眞理子)

福島県南部の棚倉町に建つこの小学校は、町にとっての<歴史の継承と文化育成の拠点>として構想され、建設にあたっては地元の熱い思いと大きな期待が寄せられた。計画の段階では住民や教職員の他に保護者・児童も加わり、全部で30回に及ぶディスカッションが行われたという。敷地はそれまでの校地に加え、泉や雑木林などの残る土地が確保され、糸トンボの群生する池や林にも隣接する。建物はそれまでの土地の形状を壊すことなく緩やかな斜面に沿って配置され、子どもたちは中庭や屋外の自然環境の中で思う存分遊ぶことができる。全学年6学級という小さな学校だが、校舎の設計にはいろいろな試みがみられる。教室棟、管理・特別教室棟、ランチルームなどを音楽堂のある中庭を囲んでスロープでつなげ、外周壁はRCだが、空間に開放感をもたせるためと、木材の産地であることを考慮して屋根は木造である。小屋は大断面集成材を使い、棟ごとに異なる架構方式がとられた。建物全体が変化に富む楽しい空間となっている。設計プロセスを含め、これからの学校づくりへの提案と試みがバランスよく実現できた作品である。


群馬県立しろがね学園・群馬県立渡良瀬養護学校しろがね分校 船越徹(評/佐久間博)

私の知っている知的障害者教育の現場にいる女性は、知的障害者にとっての良い住まいについて、次のように言います。五感に心地よい刺激を与える材質の、感覚能力が十分に発揮できるような建物。落ち着いた時間の流れる、深い静けさがあること。自然に恵まれ、植物やいきもの(いぬ、ねこ、うま、とりなど)にふれあえること。プライベートとパブリックなスペースの区切りがあること。具体的なイメージとしては、木造。採光が良く明るい場所と影の部分もある田舎の田園の中にあります。打放しのコンクリート、ガラスの大きな開口、シャープな鉄のフレーム、そう、私達の都会の最新の建物(現代建築が追い求めてきた姿 ?)と同じです。それは、おそらく設計者の無意識の深い思いやり、「彼らがいずれ社会復帰する現実に1日も早く慣れさせてあげたい。だからこそ、ここの空間は、現代の建築の流れにそった質の高いものに。」の現れでしょう。


谷口建設社屋 長村寛行 (評/秋元 和雄)

審査の日、単線の「のと鉄道」は富山湾を右手に、のどかに目的地に向かっていた。車窓からは施釉された黒い瓦が印象的な集落が次々と展開される。在来工法でほとんど新建材が使われていない姿は、今となっては、大変貴重な眺めと言えよう。谷口建設社屋は製材所を併設する建設会社らしく、木の香が漂うオフィスビルだ。建物は、Show Roomとしての役割をもたせた設計との説明通り、コンクリート、鉄骨、木を適材適所に配された混構造で、巧みにコントロールされたインテリアデザインと木造家具であたたかい雰囲気にまとめられている。フロアーヒーティングの為フリーアクセスフロアーの替わりに腰部分に設けられたOA機器用配線スペース、書類入れの上に乗せられた集成材のパネルによる広いパソコンスペース、既製品を利用した移動棚、会議室の壁に組み込まれた空調ユニット等々、細部に至るまで精緻にデザインされている。在来工法でほとんど新建材が使われていないが、表現はモダーンで意欲的だ。Uターンしてこの地で活躍する若い建築家と建設会社である施主と施工者の思いが一致した、小品ながら質の高い建物は、日本建築士会連合会賞に値する。


淡路サービスエリア上り線休憩施設 柳川陽文 (評/佐野 幸夫)

サービスエリアは明石海峡大橋のたもと、大阪湾を前景に阪神を一望する丘の中腹にある。道路管理協会は、絶好の立地と多様化する利用に応えて、往復ドライブが可能な上下線回遊方式、立地に相応しい外構デザイン、コンペによる設計者選定など、意欲的に取り組み、見事な成果を上げている。上下線の二つの施設は、同じ設計条件の下に別の設計者によって設計されている。軽快な金属外装、眺望を重視した大きな開口、外構と建築の相関など手法を共にする一方で、建築各部にはそれぞれの工夫を凝らしている。上り線施設では歩道並木で樹影を作り、これがアメニティー演出の格好の場になっている。強い照り返しに備えて、駐車場側のガラス開口には中間輝度面を作る幅広の鋼板方立を設け、高窓による天井採光や、トップライトによる内部採光を加えて、輝度差の出やすい大空間を明るく柔らかく仕上げている。運営時間や運営形態の異なる施設内部の計画は、ゾーニング、デザイン共に快適なものである。外壁ガラスブロックのトイレは明るく、多様な利用者に配慮した平面計画、清潔を保つ材料の選択やディテールの工夫、採光と換気の工夫など、周到な計画は見事なものである。


平成ドミノ・堺 横河健 (評/平倉 直子)

幹線道路(市電も走る幅50m)沿いに建つ社員寮の第一印象は、柱状のブロックを四隅に建ち上げ、オープンスペース(空中庭園)を間にはさみながら継いでいることによって、軽快感があり、定型化した集合住宅からは想像できない何かを期待させるものがあった。一見するとこの空中庭園がぜいたくにも、また奇抜にも見えがちであるが、延べ床面積を消化しながらレンタブル比80%を満たし(除外面積を含めても70%)、中高層集合住宅に求められる避難上の安全対策と採光や通風、眺望といった戸建て感覚に近い居住性、緑化地域としてのうるおいを居住者と近隣が共有し得ること、等々を限られた予算の中で相乗的に解決し、効果を上げている点で、この役割は大きく、並々ならぬ作者の意図を感じる。更にこの集合住宅は、同一平面によるメゾネット形式の住戸を4戸螺旋状に回転させながら立体的に積み上げていくというシステムを持ち、この空間構成のアイデアをSRCラーメン構造による4体のタワーと、それらをRCの無梁版でつなぐ構造によって、上下移動などの吹き抜けや、プランニングの自由を確保し、なおかつ、低層から高層までに対応するという、完成度の高い計画である。集合住宅の可能性を広げる試みとして、評価に値するものである。


大興蓼科山荘 北森俊妃護 (評/材野 博司)

洋風の研修施設や保養所が並ぶ別荘地で、樹々の間に現れる「大興蓼科山荘」の木造のたたずまいは、別荘という非日常的空間でありながら、永く木造に親しんできた遺伝子の日常的潜在記憶を、出会いから懐かしさとともに新鮮によみがえらせてくれる。ほとんど造成せず、斜面敷地の高い側にあるアプローチ空間は木造、反対側の低い半地階空間は鉄筋コンクリートで支えつつ、水平に並べた姿は、真っすぐに垂直に立つカラ松林群との対比の美をつくり出している。また、各室を地形に沿って雁行状に配することによって、個人別荘の集合のしつらえを思わせるヒューマンスケール感と軽やかさがにじみ出る。これらは環境を大切にする自然との共有デザインを目指すものであるとともに、保養所空間が本来持つべきである、やすらぎの極を提供してくれる。それでいて、エントランスホールからダイニングtねラウンジへと続く空間は、斜面に合わせて下降させ、その途中で天井の立体トラスの構造体をダイナミックに見せつつ、その先のラウンジで南面の窓一杯にカラ松林の風景を巧みにとりこむというシークエンス(動くに連れて変化する空間の連続性)の動的面白味も印象づけてくれる作品である。

 作品賞
 賞設計者 所属建築士会 事務所名
建物名称
所在地
施工者
建築主
優秀賞近藤道男 東京建築士会 近藤道男建築設計室
棚倉町立社川小学校
福島県東白川郡棚倉町
戸田建設株式会社東北支店
棚倉町
優秀賞船越徹 東京建築士会 株式会社アルコム
群馬県立しろがね学園・群馬県立渡良瀬養護学校しろがね分校
群馬県前橋市
佐田建設株式会社
群馬県・群馬県教育委員会
優秀賞
長村寛行 石川県建築士会 Architect Office Strayt Sheep

谷口建設社屋
石川県珠洲市
株式会社谷口建設
株式会社谷口建設

 優秀賞柳川陽文 大阪府建築士会 株式会社小河建築設計事務所
淡路サービスエリア上り線休憩施設
兵庫県津名郡淡路町
戸田・淡路土建淡路SA上り線休憩施設等新築工事特定建設工事共同企業体
本州四国連絡橋公団第一管理局・財団法人本州四国連絡道路管理協会
 奨励賞横河健 東京建築士会 株式会社横河設計工房
平成ドミノ・堺
大阪府堺市
株式会社森本組大阪本店
大同生命保険相互会社
 奨励賞北森俊妃護 東京建築士会 KAJIMA DESIGN
大興蓼科山荘
長野県茅野市
鹿島建設株式会社関東支店
大興物産株式会社

業績賞
優秀賞阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク代表世話人
小林郁雄 兵庫県建築士会 株式会社コー・プラン
著作及び実践活動 「『復興市民まちづくり』の刊行及び支援活動」
発行所 株式会社学芸出版社
奨励賞伊藤邦明 宮城県建築士会 東北大学
著作 「旧仙台藩要害-金ヶ崎-」
著作 「伝統的建造物群保存対策調査報告書」
発行所 金ヶ崎町教育委員会
奨励賞後藤道雄 沖縄県建築士会 有限会社清武建設
実践活動及び技術の開発 「環境保全に資する一連の建築技術的
社会実践活動及びそれに伴う研究開発」