2003年06月29日 Sun

「旧諸江屋改修工事」

北陸中日新聞 2003/06/29 金沢版 20面 (185mm×270mm)
思ったより大きく掲載されていて驚く。

ザ・スタイル 95回

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建築士 長村寛行さん

古都・金沢の趣を残すひがし茶屋街。藩政期のいろまちのたたずまいを伝えるまちの入口に、昨年、新しい名所が誕生した。江戸時代の茶屋「諸江屋」が空き家になっていたのを改修した料亭「螢(ほたる)屋」だ。

観光客が、決まってガイドの話を聞く広見に沿って建つ、少々変わった赤茶色の外壁の料亭を、観光客も話しもそぞろについのぞき込む。ボロボロだった古い家に新しい生命を吹き込んだのは、建築士・長村寛行(四五)。

「仕事の話がきたときは、うれしいというより怖いというのが正直な感想でしたねえ」
百八十年前から建ち、まちの入り口に建つシンボル的な建物。しかも、和の仕事は長村にとって初めてだった。しかし、一度聞いてしまった面白そうな話のイメージは、頭の中でどんどん膨らむ。壁はなくしてしまって、階もあいまいにしてしまおう・・・。

「魅力に勝てず」引き受けた仕事だったが、当初考えた設計は、建物に残る多くの傷をみるうちに、大幅に変わっていく。「ここでしかできないことでないと意味がない。柱や梁(はり)の傷は、ただの傷じゃなくて、歴史の大切な参考書だと思うようになった」。土壁を少し破ってみると、十四層にも塗り重ねられた壁の断面が、十二単のように艶やかな姿を現す。「家の年輪だと思った。茶屋としての風致を残し、今の時代を盛り込んで後世に受け継いでもらうのが、ここでの仕事だ」。腹は決まった。

建築の仕事は、形が残る仕事と思いがちだが、「残ってもせいぜい五十年。そう考えると結構むなしくなるんですよ」と言う。「でも、ここは伝統的建造物群保存地区だし、たぶん、ゼロにはならないでしょ。何か残ると思う。そういう意味では、この仕事ができてラッキーだった」
今は素材として木に注目している。一般住宅には使われているものの、コンクリートや鉄に比べると建築の世界ではマイナーな素材だ。そんな素材に取り組む理由を話す目が輝いた。「まだ、やりつくされていない素材だから。やりがいがあって面白いテーマだと思う」。探求心は尽きない。(敬称略)

記者から
「デザインはね、機能美。表面の形や模様が変わっていたりしても、それは流行とかで、デザインとは違うと思うんですよね」。持論を明確に話し、これまで手掛けた建物について、建築の知識がない素人記者にも丁寧に説明してくれる。そんな姿勢の根元の一端を「建物は大きいから、恥ずかしいものをつくっても隠しておけないから」という言葉に見た気がする。家を建てるなら、こんな逃げがない人に設計して欲しいなあと思う。あ、でも、貯金ないなあ。そこも相談できませんかねえ、長村さん・・・。 (丸山崇志)